世界最大のカストディ銀行であるBNY(Bank of New York Mellon)が、自社のデジタル資産カストディ(Digital Asset Custody)プラットフォームにUSDCを初のステーブルコインとして追加した。預託資産残高(AUC)59.4兆ドルを誇る同行は、Circle(サークル)との提携を拡大し、機関顧客が伝統的資産と並行してドルペッグトークンの保管・送金・発行(mint)・償還(redeem)を行えるようにした。
発表の経緯と即時対応内容
2026年6月29日、BNYは公式リリースでデジタル資産カストディプラットフォームにおけるUSDCサポートの開始を発表した。同プラットフォームではこれまでトークン化された伝統的資産を中心に扱ってきたが、USDCの追加により初めてステーブルコインがラインナップに加わった。発表と同時に、既存の機関顧客向けにUSDCの保管口座開設と送金テストが順次始まっている。
今回の発表は、BNYとCircleの間で既に進行していた準備金管理および決済インフラ分野の協業を、カストディ領域まで広げる形となる。BNYは2020年代前半からデジタル資産カストディの構築を公言しており、その集大成と言える位置づけだ。
59.4兆ドルのカストディ資産が意味するもの
BNYの59.4兆ドルという預託資産残高は、世界のカストディ銀行の中で圧倒的な首位に立つ規模だ。これは世界GDPの半分以上に相当し、同行がステーブルコインをプラットフォームに取り入れた事実は、伝統金融(TradFi)とデジタル資産の融合が機関レベルで加速していることを裏付ける。
- BNYは1784年創業の米国最古の商業銀行で、240年超のカストディ業務の歴史を持つ
- 顧客ベースには中央銀行、政府系基金、年金基金、大手運用会社が含まれる
- デジタル資産カストディは規制当局の監督下で段階的に稼働
- USDCは同行プラットフォームで初のステーブルコイン資産として位置付けられた
Circle提携拡大の具体的な機能
BNYの機関顧客は今回の統合により、以下4つの機能を単一のインターフェースで利用できるようになる。これにより運用効率と資本効率が同時に向上すると期待されている。
- 保管: 規制準拠のカストディ環境でUSDCを安全に保管
- 送金: 機関間の台帳ベース・リアルタイム決済
- 発行: 米ドル預託による新規USDCのミント
- 償還: USDCから米ドルへの逆交換(リデンプション)
特に償還機能の存在は、USDCが単なる投機的な取引素材ではなく、実務的な決済・決済手段として機関の残高に組み込まれたことを示す。発行と償還の双方向が開かれたことで、機関は市場状況に応じてUSDCと法定通貨を自在に行き来できる。
市場の即時反応と関係者コメント
発表直後、暗号資産市場ではUSDCの機関採用が一段と進むとの見方が広がった。USDCはUSDT(テザー)に次ぐ時価総額のステーブルコインであり、BNY統合は信頼性と流動性の両面で好材料と受け止められた。市場参加者が注目した主なポイントは以下の通りだ。
第一に、BNYという伝統金融の巨大カストディ機関がUSDCを正式な資産区分として受け入れたことで、ステーブルコインを巡る規制上の不確実性の一部が解消された。第二に、機関資金の流入経路が開かれたことで、分散型金融(DeFi)や実物資産(RWA)市場への資金回転が加速する可能性が指摘された。第三に、Circleの上場後、財務透明性が強化された点も機関需要の増加に寄与している。
業界アナリストは「BNYの動きは、他のグローバルカストディ銀行にも波及効果をもたらすだろう」と指摘。State StreetやJ.P. Morganなど競合する大手カストディ銀行の対応にも注目が集まっている。
Bybit視点: 機関カストディと取引所マーケットの接続
今回のBNY-Circle提携は、取引所エコシステムにも影響を及ぼす。Bybitをはじめとするグローバル取引所はUSDCを主要決済通貨として扱っており、機関カストディインフラの拡張は取引所の流動性プールに流入する機関資金の規模を押し上げる可能性がある。BybitはUSDC建ての現物・先物・スワット商品を幅広く提供しており、機関顧客がBNYで保管したUSDCを取引所へ移して戦略を実行するワークフローがより円滑になる見込みだ。
また、BNYプラットフォームでの発行・償還機能は、機関がドルとUSDCの間を効率的に行き来できるようにする。これは結果的に取引所のUSDCマーケットの厚みを拡大し、小売トレーダーにも狭いスプレッドと安定した約定環境をもたらす。BybitのUSDCペア取引量は、機関資金流入の進展に伴い中長期的に増加基調をたどるとの見方が出ている。
今後の展望と留意点
BNYのUSDC導入は単発の出来事ではなく、伝統金融によるデジタル資産受容のロードマップを示す合図と評価できる。今後は以下の方向への拡張が想定される。
- USDC以外の規制準拠ステーブルコイン(PYUSD、USDPなど)の追加サポート
- トークン化国債やマネーマーケットファンドとUSDCを組み合わせた商品の登場
- 機関間の自動決済用USDCブリッジインフラの整備
- スマートコントラクトによる担保管理・貸出統合
ただし規制フレームワークは国ごとに異なり、特に米国のステーブルコイン立法(STABLE Act、GENIUS Actなど)の行方次第でカストディ銀行が提供できる範囲が変わる点に留意が必要だ。投資家は規制動向とBNYの四半期決算におけるデジタル資産カストディ関連開示を継続的に確認することが求められる。
よくある質問(FAQ)
BNYがUSDCをカストディプラットフォームに導入したのはいつ?
2026年6月29日に公式発表された。これによりBNYのデジタル資産カストディプラットフォームでサポートされる最初のステーブルコインがUSDCとなった。
BNYのカストディ資産残高はどれくらい?
約59.4兆ドル。これは世界のカストディ銀行の中で最大規模であり、米国GDPの約2倍に相当する。このうちデジタル資産カストディの比率は現時点で未公開だが、USDC導入で拡大が見込まれる。
機関顧客がUSDCでできる操作は何?
保管、送金、発行(mint)、償還(redeem)の4つのコア機能を利用できる。これらにより伝統的資産とデジタル資産を単一のカストディ環境で統合管理できる。
Circleとはどんな会社?
USDCを発行するフィンテック企業で、米ドル準備金を基にUSDCを1:1比率で発行している。月次の準備金監査報告を公開し、規制遵守を前面に打ち出すステーブルコイン発行体だ。
Bybitユーザーへの影響は?
機関資金がUSDC経由で取引所に流入しやすくなり、BybitのUSDCマーケットの流動性が拡大する可能性がある。これは小売トレーダーにとっても狭いスプレッドと安定した約定環境につながる。
他のカストディ銀行も追随する可能性は?
業界アナリストの多くは波及効果を指摘している。State StreetやJ.P. Morganなど競合大手の動向が注目されており、USDC以外の規制準拠ステーブルコインへの拡張も視野に入る。